つぐない
35才と36才の息子と娘がいるが、彼らが結婚して以来、
私からは、ほとんど連絡しない。
会うことも、めったにない。
本音を言えば淋しい。
でも、向こうが、私を、もう必要として
いないんじゃ、仕方がない。
今、振り返ってみれば、私は、いい母親じゃなかった
と思う。
世間でいう、良妻賢母のいい母親像は、今とは
かなり違っていた。
男は仕事。女は、家庭を守る。
子供は、口答えせず、親に従う。
子育ては、母親の役目。
という、私の親世代や夫世代の目が
私に、プレッシャーを与え、苦しめた。
厳しい顔をして、子供の意見もあまり聞かず、
逃げ場のない子供には、さぞ、つらい思いを
させただろうと今、思う。
昔、教師をしていた99才の母は、今でも
私に会うと、
ああしろ。こうしろ。
と、指図してくる。子供は親に従うものだと
今だに思っている。
母に会った後は、いつも具合が悪くなる。
子供たちも、私と同じ気持ちなのかもしれない。
もう、巣立った子供たちを自由にさせてやろう。
それが、今の私の子供たちへの償いなのだから。